相変わらず色気のある街
久し振りだな、六本木。相変わらず色気のある街だ。この雰囲気に呑まれて人生設計が狂っちゃった人間がどれほどいるんだろうか(笑)。…などと“妄想を掻き立ててくれる街”っていうのは、どこも大概元気がいい。ちなみに、六本木でのオイラのミッションは、単にその街に構えたオフィスでお待ちの、とある人に物を渡すだけ。もちろん「例のブツをよろしく…」などと具体的に口にできないようなキナ臭いシロモノではない。ぶっちゃけ、誰かに託しても構わないブツではあったが、自ら行くことが、相手へのサプライズになるのなら、それはそれで楽しい、と思えたから、他にもいくつか用事を集約しつつ、今日という日を“あちこち駆け回る日”にした。そのあちこちの4件め、六本木のオフィスに到着し、長い付き合いの人物とご対面。「うわっ、何で?」と言われ、「何でもないよ。会いにきたんでしょーが。」と、笑顔ひとつでその場を去った…これが六本木における、クールな顔見せのひとつだと勝手に妄想したりして…いやいや、アポなしの、しかも相手と会話もそこそこじゃあ、全くもって美しくない。これは、よほど気心知れた人に対して以外は、あまり真似しない方がいい(笑)。
さてと、軽く“変な人”と思われたあと(笑)、ゆらゆらと六本木の街を歩いたのだが、これはこれで楽しかった。よくあちこちで見かけるチェーン店やコンビニが立ち並ぶその合間や路地裏に、地元に根付いている雰囲気の店もちらほら…彼らこそ“六本木の良心”であり、シンボリックなタワーとはまた違った“街の個性”だ。目に飛び込んできたのは「美味しいコーヒーあります」の看板。また、その店の外観は、いかにもオイラが好みそうなレトロな雰囲気。本当に美味しいものが口にできそうな気がして、吸い込まれるようにその店に入った。
いやいや、いいじゃないですか。昔ながらの珈琲専門店の雰囲気。店内全体、皆さんもご想像どおりの“こげ茶色”で統一され、入口の振り子付きアナログ壁掛け時計も同じ配色だ。騒々しい“あの”交差点が近くにあるとは思えないほど、この店内だけは静かにゆっくりと時間が流れている…さてと、アイスコーヒーをゴクゴクと飲みたかったので、何も見ずに即座にオーダー。その間、辺りを見回すと、各テーブルにそっけなく立てられたアクリルに目がとまった。で、それに表示されたメニューこそが、この店で頼めるオーダーのすべてであることに気付く。どおりで水しか持ってこなかったわけだ~。さて、気になる珈琲の種類だが、「モカ」は「モカマタリ」と書かれ、ほか、「ブルーマウンテン」「マンデリン」「キリマンジェロ」「コロムビア」という王道ラインナップ。また、このテの店ならではの一品「ウインナーコーヒー」も健在だ(笑)。紅茶は「ダージリン」と「アッサム」だけ。「アールグレーをアイスで」なんてことを口にしてはいけない(笑)。ジュース類は「ブドウ」「オレンジ」「レモン」。ちなみに、すべて“スカッシュ”にも出来るようだ。軽食系はケーキとサンドウィッチ…以上。
このこだわり、オイラは一切文句ないです(笑)。つまりは、珈琲が美味しければいいのだ。んっ、アイスコーヒーは邪道だったかな!?いやいや、珈琲専門店だからこそ、アイスコーヒーに一切の手抜きはナシのはず…
数分後、円すいグラスの表面に細かく綺麗な水滴を表面にきらめかせて、まるでウイスキーに使われるような、美しく透き通った氷が浮かぶアイスコーヒーが登場した。ストローでかき回すと、氷がカラコロと音をたて、店内にそのやさしい音色が響く…「頼んでよかった」と思える瞬間だ。おっと、小さなミルクピッチャーと共に差し出された“なぞのグラス”に「!?」。まるで、ワイングラスの超ミニチュアのようなそのグラスの中には、何と、コーヒーの味がついている“黒いガムシロップ”が注がれていた!アイスコーヒーを口にする前に、これをひと目見ただけで「相当、こだわっていらっしゃる」と思えたので、実際にストローでひとくち飲んだ時のアイスコーヒーの美味しさに喜びもひとしおだった。期待を裏切らないこの深い味わい…珈琲が飲めるオトナになれて本当によかった(笑)。
…その後、1時間ほど居ただろうか。その間、新たに入ってきたお客さんの大半が、オイラの年齢を上回る雰囲気の人だった。ここはきっと、“六本木ミドルのオアシス”なのだ。かと思えば、常連客と思われる30代前半くらいの姉さんが、蝶ネクタイ姿でカウンターに立つおじさんを、気さくに「マスター」と呼んでいた。
もう、完璧だ。素敵な珈琲専門店に出会えて本当によかった。オイラも将来は「プロデューサー」という堅苦しい感じではなく、誰からも気さくに「兄さん」とか「パパ」…な~んていう風に呼んでもらえる人間になろうと心に決めた(笑)。
…六本木には、いつものように“最先端”だとか“モダン”だとかを求めると同時に、これから先は“親近感”ってやつも求めていこうと思う。この街から人とのふれあいがなくなりません様に…
<おわり>
